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長谷 純宏; 藤岡 昭三*; 吉田 茂男*; Sun, G.; 梅田 正明*; 田中 淳
Journal of Experimental Botany, 56(414), p.1263 - 1268, 2005/04
被引用回数:40 パーセンタイル:65.3(Plant Sciences)花弁がフリル状になるシロイヌナズナの変異体について調査した。変異体はステロールメチル基転移酵素2()に変異を有し、それによってステロールの成分が変化していた。変異体の花弁では通常は起こらない核内倍加が起きていることがわかった。ロゼット葉においても倍数性が上昇したが、形態的には変化が見られなかった。これらの結果より、核内倍加の抑制が花弁の形態形成に重要であり、この抑制には正常なステロールの成分が必要であることが示唆された。
北村 智; 鹿園 直哉; 田中 淳
Plant Journal, 37(1), p.104 - 114, 2004/01
被引用回数:383 パーセンタイル:99.07(Plant Sciences)アントシアニンやプロアントシアニジン(PA)などのフラボノイド化合物は植物体内でさまざまな機能を発揮する。これらフラボノイドは細胞質で合成され最終的に液胞に蓄積されるが、この輸送・蓄積機構についてはほとんど不明である。イオンビームで誘発したシロイヌナズナの新規突然変異体transparent testa 19(tt19)は、栄養器官でのアントシアニン色素並びに種皮の色素の減少した表現型を示した。染色体歩行及びPCR解析によりTT19遺伝子を単離し、TT19遺伝子がグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)をコードしていることを明らかにした。ペチュニアのホモログ候補であるAN9遺伝子をtt19変異体で発現させると、栄養器官でのアントシアニン蓄積は相補されたが種皮色は相補されなかった。このことは、TT19遺伝子は、アントシアニンの液胞内蓄積に必須であることだけでなく、AN9にはない機能をも有していることを示唆している。さらに、tt19変異体でのPA前駆体の蓄積パターンは、野生型のパターンと異なるものであった。これらの結果から、TT19遺伝子は、アントシアニンだけでなくPAの蓄積過程にも関与していることが明らかとなった。
坂本 綾子; Lan, V. T. T.; 長谷 純宏; 鹿園 直哉; 松永 司*; 田中 淳
Plant Cell, 15(9), p.2042 - 2057, 2003/09
被引用回数:81 パーセンタイル:84.23(Biochemistry & Molecular Biology)われわれは高等植物における紫外線応答機構を解明する目的で、イオンビームを照射を行ったシロイヌナズナから紫外線感受性変異株を単離した。の幼植物体に対してUV-B照射を行うと、暗条件下及び明条件下において根の伸長が抑制されるという表現型を示した。の染色体構造を詳しく解析したところ、株では第一染色体が3か所で切断されて、生じた断片が転座や逆位をおこしており、これによって損傷トレランス機構に関与するとみられる遺伝子が破壊されていた。変異株はDNAの複製を阻害することが知られている線やMMCなどの処理に対しても高い感受性を示した。また、紫外線照射後の幼植物体の根にBrdUを取り込ませてDNA合成効率を調べると、rev3-1株では野生型に比べてDNA合成効率が低下していた。以上のことから、rev3-1では遺伝子の欠損のために、紫外線で生じた損傷によってDNA複製が停止し、その結果根の伸長が阻害されているという可能性が示唆された。
鹿園 直哉; 横田 幸彦*; 北村 智; 鈴木 智広*; 渡辺 宏; 田野 茂光; 田中 淳
Genetics, 163(4), p.1449 - 1455, 2003/04
高等植物におけるイオンビームの突然変異誘発効果を調べるため、シロイヌナズナにカーボンイオンを照射した。カーボンイオンは電子線に比べ胚発生致死及び葉緑素欠損突然変異体をそれぞれ高頻度(11倍,7.8倍)に誘発した。カーボンイオン照射後の突然変異体選抜の過程で2つの新しいフラボノイド突然変異体()を単離した。3系統ののうちの2系統では遺伝子内に小さな欠失をもつこと、残りの1系統では遺伝子を含む断片に大きな構造変化が起こっていることがPCR及び塩基配列解析からわかった。分離頻度を用いて突然変異率を算出したところ、カーボンイオンは電子線に比べ17倍突然変異率が高いことが明らかになった。新しい突然変異体が単離できたこと、及び突然変異率が高いことは、イオンビームが植物遺伝学において有用な変異原として利用できることを示唆する。
鹿園 直哉; 田中 淳; 北山 滋*; 渡辺 宏; 田野 茂光*
Radiation and Environmental Biophysics, 41(2), p.159 - 162, 2002/04
被引用回数:39 パーセンタイル:70.04(Biology)植物における重イオン照射効果を調べるため、シロイヌナズナの乾燥種子に炭素イオン,ネオンイオン,アルゴンイオンを照射した。ネオンイオン,アルゴンイオンによる致死の生物効果比(RBE)は350keV/mを超える線エネルギー付与(LET)の値でピークを示した。この値は100-200keV/mでピークを示すほ乳類細胞等の値に比べ高いものである。さらに、不稔率を調べると、LETが354keV/mのネオンイオンのほうが113keV/mの炭素イオンより高いRBEを示した。これらの結果はシロイヌナズナ種子における致死のRBEピークは単細胞系に比べて高いLETで生じることを示している。致死及び不稔はDNA損傷によって引き起こされることが知られている。このLETのシフトは種子中の化合物組成やDNAの水和状態の違いに主に起因すると推察される。
長谷 純宏; 田中 淳; 馬場 智宏*; 渡辺 宏
Plant Journal, 24(1), p.21 - 32, 2000/10
被引用回数:47 パーセンタイル:71.66(Plant Sciences)シロイヌナズナの新規突然変異frl1(frl1 1)を単離し、その表現型を解析した。frl1は花弁とガクに特異的にそれらの周縁がギザギザになる表現型を示す。frl1の花弁先端部では、細胞数が野生種に比べて少なく、また、さまざまな程度に肥大した細胞が見られた。肥大した細胞では、巨大な核が観察され、野生型では起こらない核内倍加が起きていることが示唆された。また、frl1の花弁の発達は、花の発達ステージ10以降に異常になることがわかった。これらの結果から、FRL1遺伝子は、花弁の発達後期における細胞分裂の維持もしくは核内倍加サイクルへの移行の抑制に関与することが示唆された。また、花の器官のアイデンティティーを決定するホメオティック変異体との二重突然変異体解析から、FRL1遺伝子は花弁とガクのアイデンティティーに特異的に働くことが示された。
鶴留 浩二; 時澤 孝之; 山田 哲治*; 長柄 収一*
JNC TY6400 2000-014, 39 Pages, 2000/05
本研究では、放射性物質及びその放射線による植物への影響調査を目的として、植物の遺伝的影響調査及び植物体中の放射線強度分布の測定手法の検討を行った。本研究では遺伝子研究のモデル植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を用いて室内実験を行った。尚、本研究は先行基礎工学研究分野に関する研究テーマとして、平成9年度から平成11年度の3年間、岡山大学農学部応用遺伝子工学研究室の山田哲治教授と共同研究で実施したものである(平成9年度は客員研究員)。(1)A.thalianaの遺伝子影響は、鉱さい土壌で生成させたA.thalianaからDNAを抽出しカルコン合成遺伝子及びトランス桂皮酸酵素遺伝子についてシークエンス解析した結果、解析範囲内での遺伝子変異は認められなかった。(2)放射線強度分布の測定手法の検討は、鉱さい土壌で生育させたA.thalianaについてX線フイルムとイメージングプレート(IP)を用いて解析した結果、2手法ともに植物中の放射性物質濃集部位を確認できなかった。本研究により、今後の植物影響評価の基礎となる遺伝子解析操作に関わる一連の手法を習得することができた。
Choe, S.*; Dilkes, B. P.*; Gregory, B. D.*; Ross, A. S.*; Yuan, H.*; 野口 貴弘*; 藤岡 昭三*; 高津戸 秀*; 田中 淳; 吉田 茂男*; et al.
Plant Physiology, 119(3), p.897 - 907, 1999/03
被引用回数:189 パーセンタイル:97.23(Plant Sciences)シロイヌナズナに化学変異原処理(EMS)やT-DNA、トランスポゾンを用いて矮化(Dwarf)する同一遺伝子座の突然変異体10変異体を作成し、この遺伝子座をDWF1と命名した。DWF1はすでにDIMと名づけられた遺伝子座と同一であり、その遺伝子産物の機能はブラシノライド生合成系の上流、24-MethylenecholesterolからCampesterolへのC-24レダクターゼであることを明らかにした。得られた数多くの突然変異体から、この遺伝子のFAD結合ドメインがDWF1遺伝子産物の重要なアミノ酸配列であり、得られた10個の突然変異体のうち、7つがこのドメインかもしくは上流での突然変異であることがわかった。したがってdwf1ではDWF1遺伝子産物であるC-24レダクターゼが機能低下または欠如し、ブラシノライドホルモン分泌が低くなることによって、矮化を生じていることを明らかにした。
Choe, S.*; 野口 貴弘*; 藤岡 昭三*; 高津戸 秀*; Tissier, C. P.*; Gregory, B. D.*; Ross, A. S.*; 田中 淳; 吉田 茂男*; Tax, F. E.*; et al.
Plant Cell, 11, p.207 - 221, 1999/02
被引用回数:201 パーセンタイル:97.59(Biochemistry & Molecular Biology)シロイヌナズナにおいて、Ws野生株から矮化を示す新しい突然変異体、dwf7を発見した。dwf7の花の電子顕微鏡観察から、矮化は花の器官である花弁、萼、雄しべ等で観察されるがその程度は器官ごとに異なり、また矮小率は草丈ほど高くないことを示した。染色体マッピングの結果、dwf7は第3染色体の上腕、DNAマーカーnga172の非常に近傍に位置することがわかった。一方、その位置から原因遺伝子がDesaturase遺伝子である可能性が示唆できたため、Desaturase遺伝子の塩基配列でのWsとCol両系統間のCAPSマーカーを作成し、染色体マッピンクを行ったところ、dwf7遺伝子座と一致し、変異を同定できた。さらに、生化学的手法を用いて、dwf7ではdelta7Sterol-C-5-Desaturase活性がないことを明らかにし、DWF7の遺伝子産物を決定することができた。
田中 淳; 田野 茂光*; T.Chantes*; 横田 幸彦*; 鹿園 直哉; 渡辺 宏
Genes and Genetic Systems, 72(3), p.141 - 148, 1997/06
被引用回数:52 パーセンタイル:72.97(Biochemistry & Molecular Biology)シロイヌナズナの乾燥種子に炭素イオンビームを照射し、照射種子1,488個に由来する11,960個体の自殖後代で、種皮にアントシアニン色素が多量に点在する、新しい突然変異体(anthocyanin spotted testa: ast)を得た。アントシアニンの蓄積量は開花後6日目で最大となり、野生株の5、6倍量に達した。また色素合成能が、異なった変異体tt7,ttgと交配した結果から、AST遺伝子は未熟種子の成熟過程において組織・時期特異的にアントシアニン合成を抑制する遺伝子であることが推測された。遺伝分析からこの変異は遅滞遺伝で単一劣性遺伝を示した。DNAマーカーを用いた染色体マッピングにより、AST遺伝子は第1染色体のnga280マーカーから約3.2cMの距離に座位すると考えられた。
田中 淳; 田野 茂光*; Chantes, T.*; 横田 幸彦*; 鹿園 直哉; 渡辺 宏
Genes and Genetic Systems, 72(3), p.141 - 148, 1997/00
被引用回数:52 パーセンタイル:72.81(Biochemistry & Molecular Biology)シロイヌナズナの乾燥種子に炭素イオンビームを照射し、種子色に変異のある突然変異体のスクリーニングを行った。150~200Gyの照射種子1,488個に由来する11,960個体の自殖後代で種皮にアントシアニン色素が多量に点在する、新しい突然変異体(anthocyanin spotted testa:ast)を得た。アントシアニンの蓄積量は開花後6日目で最大となり野生株の5、6倍量に達したが、完熟種子、幼苗、本葉、つぼみでは高い蓄積量は見られなかった。このことから、この遺伝子は未熟種子の成熟過程において組織・時期特異的に色素合成を制御する遺伝子であることが推測された。遺伝分析から、この変異は遅滞遺伝で単一劣性の遺伝を示し、またDNAマーカーを用いた染色体マッピングにより、AST遺伝子は第1染色体のnga280マーカーから約3.2cmの距離に座位すると考えられた。なお、ASTは新しい遺伝子名として登録された。
田中 淳; 鹿園 直哉; 横田 幸彦*; 渡辺 宏; 田野 茂光*
International Journal of Radiation Biology, 72(1), p.121 - 127, 1997/00
重イオンビームの植物に対する影響をシロイヌナズナの発芽率、生存率を指標として調べた。重イオンとして、17~549keV/mのLETを有するHe,C,Ne,Arを用いた。生存率では、用いた2系統でともにLET252keV/m付近で電子線照射に対してのRBF(生物効果比)が11~12と最大になり、重イオンのDNA損傷に対する効果が大きく、またイオンのLETによってその効果が異なることを明らかにした。一方、発芽率では用いた2系統で重イオンに対する感受性が異なり、DNAの損傷以外の要因が発芽に大きな影響を及ぼすことを示唆できた。さらに生存曲線で観察される生存率低下のしきい値(生存曲線の肩)に対する重イオンの効果の解析から、生存曲線の傾きと同様に、生存曲線の肩もDNAの回復能力に依存することを示唆した。
田中 淳; 田野 茂光*; 渡辺 宏; 鹿園 直哉; 横田 幸彦*
育種学雑誌, 46(SUPPL.1), 60 Pages, 1996/00
イオンビームによる突然変異の誘発は、低LET放射線等の変異原によるものとは質的に異なる可能性がある。そこで今までに報告のない、紫外線(UV-B)に抵抗性を示す突然変異の作出をシロイヌナズナを用いて試みた。野性株の種子に220MeVの炭素イオンを150、200Gy照射し、後代(M)種子を得た。一次選抜として、UV-Bを10~13kJ/m/day照射することによって生育のよい27個体を得た。その自殖によって得られるM~Mを通常環境下で展開すると供に、一部の種子を用いてさらに選抜を行った。その結果、1280M種子由来の後代から4つの異なった紫外線抵抗性株を作出することができた。照射後の根の伸長測定から、選抜した4系統は光回復と暗回復のうち、少なくともいずれかの能力が高まっており、紫外線照射によるDNA損傷の修復能が野性株より高くなっていることが示唆された。
田中 淳; 横田 幸彦*; 渡辺 宏; 鹿園 直哉; 田野 茂光*
GSI-95-10, 0, p.87 - 90, 1995/00
シロイヌナズナの種子にイオンビームを照射し、発芽率と生存率への効果を調査した。用いたイオンビームは、2種類のエネルギーのHe及びC、Ne、Arの5種類であり、LETは17~549keV/mである。LETに対するRBEをプロットした結果、生存率は用いた2系統の種子共に、LET200~250keV/mにRBEのピークを示し、単細胞系での結果と類似した傾向を示した。一方、発芽率では、RBEのピークがなく、LETの増加に伴いRBEが増加した。このことは、発芽率抑制のターゲットがDNA以外にも存在することを意味する。一方、線量に対する生存率曲線の中で、Neイオンでの生存曲線は、シロイヌナズナで通常見られる肩がなく、また傾きが他のイオンビームと比較して、緩やかな指数関数的減少を示した。このことは、イオン種間で生物効果が異なることを示唆しており、またLETだけでは説明し得ないイオンビームの効果を示す。
田中 淳; 横田 幸彦*; 鹿園 直哉; 渡辺 宏; 田野 茂光*
Radiation Research 1985-1995, Congress Proc., Vol. I, 0, 445 Pages, 1995/00
シロイヌナズナの種子にイオンビームを照射し、発芽や生存への効果及び誘発された突然変異について調べた。生存率のRBEはLET200~250keV/mでピークを示したのに対し、発芽率のRBEはLETの増加に伴って増加した。またNeイオンを用いた生存率曲線は肩がなく、指数関数的に減少する特徴的な曲線を示した。以上から、イオンビームは低LET放射線とは量的に異なった効果を与えるばかりでなく、質的にも異なることが示唆された。一方、突然変異スペクトルは、対照とした電子線と比較し、矮化植物体や色素変異体がイオンビームにより多く誘発されるとともに、線量依存性があることも示唆された。また、今までに報告されていない変異体も誘発され、イオンビームが新しい植物遺伝子資源を作出する可能性を持つことを示した。